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ぼくは東北地方の出身でもあり、判官びいきでもあるので、義経追討と奥州征伐を行った鎌倉幕府の初代征夷大将軍・源頼朝という人物に対しては、必ずしも好感情を持っていませんでした。 けれど昨年、伊勢神宮への参拝にあたって所功著「伊勢神宮」(講談社学術文庫)を読んでいると、武家政権の基を築いた頼朝公が母方(熱田神宮大宮司)の影響もあって、早くから神社崇敬の念を持っていたことが幸いし、中世以後も神宮の式年造営の継承を可能にした、という歴史を教えられました。 考えてみると、鎌倉という街は実に不思議な街。 三方を山に囲まれ海岸に南面し天然の要塞となる鎌倉市街の都市設計は、支那風の都城に倣った平安京の流れを汲み、中央に若宮大路を敷設しているのですが、京の朱雀大路の果てには天子さまの住まわれる大内裏があるのに対し、この街の極には鶴岡八幡宮という神社、すなわち神さまのお宮があります。 つまりこの鎌倉という都市は、武力によって打ち立てられた新政権の府でありながら、その中心は覇者の住居となる城郭でも政務機関でもなく、八幡さまの神社の門前町として都市設計されていたのです。 このことがその後700年、日本の歴史の半ばを占める武家政治の性格をかたちづくっているのかもしれません。 鎌倉市街の地図を見るたびに、「日本は神の国」ということははるか2600年のむかしにさかのぼってのことだけではなく、中世の歴史にもくっきりと刻み込まれているのを目の当たりにさせられるような思いがするのです。 4月のある日、その鶴岡八幡宮に参詣。ぼくにとっては15年ぶりのお参りでした。 子供のころから「義経記」などを愛読して育ったぼくには、鶴岡八幡宮の舞殿を見れば、「しづのをだまき」の歌を詠いながら舞を奉納した白拍子、静御前のまぼろしを思い描かずにはいられません。 そして本宮へと向かう急斜面の61段の大石段、向かって左手にそびえる樹齢千年の大銀杏の樹は、「金槐和歌集」の万葉調の歌でも名高かった右大臣実朝を暗殺した公暁の隠れ銀杏と伝えられ、この八幡宮のシンボルでもあり、源平盛衰の帰結としての清和源氏嫡流の滅亡、そしてそこからはじまる800年の歴史の象徴でもありました。 そんなシンボリックな銀杏の大木が2010年の3月10日未明、強風に煽られて倒壊してしまったというニュースは、すぐには信じがたく、あのイチョウの木がない鶴岡八幡宮というものをイメージすることすら困難でした。 源実朝ゆかりの「隠れ銀杏」折れる http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/disaster/366898/ 当初は回復も不可能、と報じられていた大銀杏。 倒壊鎌倉大銀杏「回復は不可能」 県が輪切りなどでの保存を要請 http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/topics/367305/ けれど4月になって、大銀杏の根元から、小さな新芽が顔を出し、移植された幹からもひこばえが伸びはじめたという報道が。 鶴岡八幡宮の大銀杏の根元に新芽 http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/disaster/375666/ ぼくらが訪れたのは、4月23日の金曜日。 いつまでも冷たさが残る、春とは思えない雨の中。 それでも倒れてしまった銀杏の根元からは、いきおいよく緑が芽吹いているようすを見ることができました。 この若々しい緑の中に、次の世代の大銀杏に育つ新芽がまじっているとするならば、ぼくらは1000年の寿命を生きて歴史を見つめる大銀杏の、ちょうど代替わりに遭遇しているのかもしれません。 静御前の舞った舞殿も、公暁の隠れ銀杏も、鎌倉初期のものがそのまま現在のものではないという説もありますが、歴史を思う縁としてのその存在は何ものにもかえがたいものだと思うのです。 伊勢神宮が式年遷宮を繰り返すことによって再生をし続けていることに象徴されるように、日本の神社というものは単なる古物の博物館ではなく、生命力を持ったまま生き続け、再生していくものなのですから。 そうして大石段の上から雨に煙る街並みと海を眺めながら、いまから800年の後、1000年の後、この鶴岡八幡宮と鎌倉の街はどんなふうになっているだろう?と思いを馳せてみました。 鶴岡八幡宮境内、本宮の脇にそれたかたすみにて写真を一枚。 15年前、同じ場所で撮影した写真がこちらのページに掲載されています。 「雨の日の女」その37*番外編 「牛若丸」と「日本武尊」 http://www5a.biglobe.ne.jp/~kenketsu/rainyday_37b.html この15年の歳月の中で、ぼくの中でも一度は折れてしまったけれど、何か新しいひこばえのようなものが芽吹きだしているような気もするのです。 |
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倒れた大イチョウ、元気すぎて
今年3月に強風で倒れた鶴岡八幡宮のご神木の大イチョウが、紅葉シーズンが終わりに近づいても、今秋はほとんど色づかず緑色の葉を茂らせている。大イチョウ再生の指導に当たる東京農業大学の浜野周泰教授は、「元気がありすぎです」と言う。 ...続きを見る |
ローカルニュースの旅 2010/12/01 10:32 |
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