may the good Lord, shine a light on you ...




in the 60’s コレクターズ・ボックス(初回限定生産)


昨年暮れのことですが、マーティン・スコセッシ監督作品「ローリング・ストーンズ~シャイン・ア・ライト」を観てきたので、その感想をここに書き留めておきます。

いろんなものに興味を持ってきたけれど、16歳から19歳くらいのいちばん多感な年頃のぼくは、決して大袈裟ではなく寝ても覚めても、いつだってローリング・ストーンズに夢中でした。

白状すると、ぼくの人生にとって、柳田國男よりも、大島弓子よりも、ボブ・ディランよりも、寺山修司よりも、ジム・モリスンよりも、手塚治虫よりも、オーブリー・ビアズレーよりも、中原淳一よりも、三島由紀夫よりも、もっともっと決定的な影響を与えてくれたのが彼らだったのです。

忘れもしない1990年2月14日、直前まで絶対に入国できないと言われていた彼らの初来日公演の初日、ぼくも5万人の観衆といっしょに東京ドームにいました。オープニングの「スタート・ミー・アップ」のあの強烈に力強いギター・リフが、熱狂のどよめきに飲み込まれてよく聴こえなかったのを覚えています。

そのときすでにデビューから二十数年、1969年末アメリカン・ツアーのマディソン・スクエア・ガーデンで"the greatest rockn' roll band"とイントロデュースされて最高のライブ・パフォーマンスを披露した瞬間(アルバム"ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト!"に収録)から数えてもちょうど20年、ずっと名実ともに世界の頂点に立つロックンロール・バンドであり続けてきたのですが、今にして思えば、19歳のぼくはただただ圧倒されるばかりで、それがどんなことなのか実感として受け止めることなんかとてもできませんでした。

それから19年。彼らが解散もせずに現役でがんばっているなってことを認識こそしていたものの、あの頃のストーンズ熱からはすっかり距離を置くようになってしまっていたぼくの目に、最新のライブ映画として届けられた「シャイン・ア・ライト」は、一言で言って驚異そのものでした。



あの頃、オールド・ウェイブの象徴として若手からことあるごとに排撃されていたミック・ジャガーが、異常に細い腰をくねらせて誰よりも若々しくダンスしていて、過去のどの時代よりもかっこいい!

あの頃、ドラック漬けのぼろぼろの身体で、生きている方が不思議だと誰もが思っていたキース・リチャーズが健在で、以前にも増して図太いリズム・ギターをふてぶてしくかき鳴らしている!

あの頃から老人の風貌で、もう体力的に2時間のライブでドラムを叩くのは無理だろうと嘲笑されていたチャーリー・ワッツが、見事に彼ならではのストーンズ特有のビートを叩き出して、大きなため息をついてみせている!

そんな驚くべき映像を目にして、この19年って一体なんだったんだろう、と、不思議な気持ちにならずにはいられませんでした。

あの頃彼らにとってかわろうとしていた誰も彼らを越えることなんかできず、多くはどこかへ消えていって、今どうしているかさえわかりません。

あの頃いつもぼくのそばにいた仲間たちも、気がついてみるとひとり残らずいなくなってしまって、今頃はどこでどうして生きているのでしょうか?

それなのに、あの頃もうとっくに友情関係なんか崩壊してどうにもならないと言われていたミックとキースのふたりが、心の底からうれしそうに肩を組んで、ひとつのマイクで歌っている!

目の前で繰り広げられる世にも不思議な光景にすっかり混乱しながら、あらためてこの19年という歳月をずっしりと感じているうちに「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ」なんかを演奏されてしまうと、不覚にも胸がいっぱいになって、思わず泣きそうな気持ちになってしまいました。

楽曲なんか書いたことのなかったジャガー=リチャーズが、アンドリュー・オールダムに無理矢理強いられて初めて作ったというこのセンチメンタルな歌を、ミックは「照れくさくて他の歌手に歌わせた」と回想しながら歌ってみせました。



かつての美少女マリアンヌ・フェイスフルも、地球上のどこかでこの映画を見ているのでしょうか?

なんだか湿っぽいはなしになってしまったみたいですが、とにかくローリング・ストーンズの音楽を浴びるように聴くと、それだけで無条件に元気になってしまいます。

バディ・ガイのブルースの過激さとか、キースのギターのあまりの適当さ加減とか、「シャッタード」やテンプテーションズの「ジャスト・マイ・イマジネーション」といった選曲に1981年のライブ盤「スティル・ライフ」を聴きまくっていた10代の頃の記憶がよみがえったり、「メイン・ストリートのならず者」に収録されていた曲がやっぱり粒ぞろいの出来映えだったり、音楽について語り出すとなるとキリがありません。

とりわけ、いま思い出しても体中が熱くなるような感覚になってしまうのは、タイトルにも使われた「シャイン・ア・ライト」。

コーラス部分の歌詞はそのまま、もうすぐ遠くなってしまうぼくの友達に贈ってあげたいようなフレーズなのです。

May the good Lord shine a light on you,
Make every song you sing your favorite tune.
May the good Lord shine a light on you,
Warm like the evening sun.

なによりも、あの頃からもう19年が過ぎてしまったというのに、「ストーンズの映画やってるから、今晩仕事終わったら観に行こうよ!」と誘ってくれる友人ができて、ほんとうに夜の銀座へ繰り出してしまうなんてことが、ぼくの人生にとって夢にも思わなかった奇跡的な出来事だったのですから。



ザ・ローリング・ストーンズ×マーティン・スコセッシ「シャイン・ア・ライト」O.S.T.







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