ジム・ジャームッシュ アーリー・コレクション




前回「ワルチング・マチルダ ~ Tom Traubert's Blues」と題してトム・ウェイツのことを綴った前の晩、最近は何を聴いてるの?と訊ねられて、ちょうど頭の中が「トム・トルバーツ・ブルース」のメロディでいっぱいだったのでトム・ウェイツの名前を出したら、映画「コーヒー・アンド・シガレッツ」でイギー・ポップと共演してるのが最高に面白かった、という話になりました。


映画「コーヒー&シガレッツ」オフィシャルサイト
http://coffee-c.com/


この映画はたしかに面白かった。そしてぼくはお酒を飲めないけれど、珈琲と煙草を味わいながら人生を愉しむことができてよかったと、心から思ったものです。




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それで思い出したのですが、同じくジム・ジャームッシュ監督作品でトム・ウェイツが主演した「ダウン・バイ・ロー」もまた、とても不思議に痛快な映画でした。

共演のアカデミー賞主演男優のイタリア人ロベルト・ベニーニ、ジャズ・ロック・バンド「ラウンジ・リザーズ」のサックス奏者ジョン・ルーリーの二人が"I Scream, You Scream, We All Scream for Ice Cream"と歌い叫びながら監獄の部屋の中を回り出すのにつられて、トム・ウェイツもやけくそになっていっしょに加わっていく姿が浮かんできたのです。

ナンセンスと言えばそれまでの、くだらない駄洒落をわめいているだけのこのシーンが、妙に可笑しい。抱腹絶倒というわけでもなく、思わずニヤニヤせずにはいられないような面白さ。

「ワルチング・マチルダ」の「マチルダ」が放浪者の頭陀袋と女性の名前のイメージをダブらせていることでその詩の世界に深みがでている、ということを前回書きましたが、そんなトム・ウェイツにも一脈通じる言葉の操り方のセンスを、さすがにジム・ジャームッシュは心得ているのだな、という気がしました。





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以前「溝口健二の映画『雨月物語』とフェリーニの『道』」でも書いたように、ぼくはあまり映画をよく観る人ではないのですが、学生のころは音楽好きで意気投合していた映画も好きな友人に連れられて、あちこちのミニシアターなどをめぐったりしたこともありました。

そのころに観た映画で、いまでもいちばん鮮烈な印象で憶えているのは、やはりジム・ジャームッシュの名を一躍高めた初期の傑作、ジョン・ルーリー主演の「ストレンジャー・ザン・パラダイス」です。





ストーリーにはドラマらしいドラマもなく、ごく大雑把に撮影されたようにも思えるこのロードムービーで、淡々と描かれるモノクロームの情景が限りなく繊細で、美しい。

ちょうどこの映画を観たのは、ぼくがブルースのレコードを買い漁っていたころ。スクリーミン・ジェイ・ホーキンスの「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」をテーマに据えるというあまりにもイカした選曲に滅茶苦茶シビレてしまったことも、懐かしく思い出されます。


それにしても、いま観てもまったく色あせていないこの映画の奇妙な抒情性は、いったいどこから来ているのでしょうか?


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気がついてみるとこの映画を観てからもうずいぶん長い歳月が流れたけれど、ぼくのなかでは未だに謎のままなのです。



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